放送禁止歌/森達也

私は、このテレビ作品は、今回の早稲田大学の上映会じゃなくて、前の立教大学の上映会で観てました。森達也監督はテレビ作品も面白い。「放送禁止歌」は文字通り放送禁止歌のドキュメンタリー。
それで、この作品やその他の映像作品を観たのも結構前なのだけど、最近も森監督の本を読んだりはしてて、今日の講演を聞いて、森監督はセンスが好きだなぁと改めて思いました。
講演会の方は、一応マスコミ志望者たちに向けた講演会で、テーマはタブーについて。今日聞いた話は、大体が今まで森監督が一貫して言ってることばっかりだったけど、やっぱり説得力がありました。
ドキュメンタリーだろうが報道だろうが、客観的な映像なんて有り得ないということ。事実は一つでも、真実はいくらでもある。ドキュメンタリーとは、一人の映画作家が見る、一つの真実。
白と黒や善と悪といった二極化ではなくその間のグレーゾーンを見ること。わかりやすい思考停止に陥ってしまわないこと。きっとその方が面白い。
それから、森達也監督の作品からは、知ることの大切さをいつも感じる。放送禁止歌だってそう。放送禁止歌というのは巨大な共同幻想で、みんな知った気になって思考停止になってしまっていることの悲しさを考えさせられた。そして、ラストシーンを見て、名曲「手紙」を聞くと、森監督のように自らが加害者であるということの認識は、私たちにも必要なんだと感じる。講演会の最後に森監督は、マスコミで働く人への一言で、自分が人を傷つけているというジレンマに泣きながらやってほしいと言っていた。私はマスコミではないけど、その視点は持っている人間でいたい。