ヴェニスの商人/マイケル・ラドフォード

ヴェニスの商人 [DVD]この前、試写会で観てきました。シェークスピアの有名戯曲の映画化。
ユダヤ人で高利貸でとなると、完全に悪役なのかと思ってたら、最初のナレーションからして、ユダヤ人に同情的な感じだった。例の法廷シーンも。原作はもっと勧善懲悪だって聞いたけど、この映画はそんなこともなくて、シャイロックがちょっと気の毒になるくらい。高利貸しからお金借りる方も悪いじゃん、みたいな。現代で言うと、好きな女を口説くために闇金でお金借りたみたいな話なのかと考えると、借りる方も悪いというか、借りる方が悪いってくらいの気になるものです。
それでも、この映画を観て、シャイロックに対して本当に悲しみを感じたかと言えば、シャイロックはまた何かしらして強欲に生きていけるんだろうなと考える自分もいる。これが偏見というものなのかな。中東問題とか歴史とかでも、私はユダヤ人が悪い側って思いこんでる気もする。だからと言って、差別して迫害してとなると、この映画のように高利貸ししか出来なくなって、迫害されたから国を作ってケンカになってって、何だか複雑で、考えても何が悪いでもないような気にすらなる。
この映画のユダヤ人も、悪い奴とも違うし、だからと言って心から同情できるキャラでもなくて、非情で強欲で悲しいほど信心深くて滑稽にさえ見えるユダヤ人の役は、悪いというより怖かった。アル・パチーノの演技が凄い。
宗教だとか歴史だとか、どっちが悪いとかで考えられないよなぁとか思った映画でした。