アワーミュージック/ジャン=リュック・ゴダール

アワーミュージック [DVD]3部構成で、1部が戦争シーンのコラージュ、2部がユダヤ人の女性とゴダール本人がサラエヴォで会う話。3部がそのユダヤ人の女性の死後の話。
何て言うか、ゴダールがこの設定で撮ったということが、私には痛いところをつかれたような気持ちになった。切り返しのシーンとか観ながら、私は、何も気付いてないのに、何を少しでも知った気でいたんだ?みたいに思えてきて、衝撃のような、自分が恥ずかしいような。
前に、ここに「ヴェニスの商人」のことを書いた時に、自分の中で差別意識というか、どっちが悪いみたいのを決めちゃうって書いたんだけど、それは良くない気がするって書いていながら、本当のところはたぶん全然思考停止してた。思考停止っていうか、洗脳されてることに自覚してると思いこんでて、実は無自覚みたいな。
私の中で、ユダヤ人という響きには、「ヴェニスの商人」のイメージと「シンドラーのリスト」のイメージとイスラエルを建国したイメージと、たくさんのイメージがあるはずで、そこには繋がりがあることを知っていたはずなのだけど、私は繋げて考えてなかった。たぶん、911とかイラク戦争とか自爆テロとか、私がリアルタイムで見た分かりやすく残酷なものに、感情が刺激されて、裏を見て知った気なって、感情論なことに無自覚になってた。
感情や本能はもちろん大事だけど、切り返しの切り返しの切り返しの切り返しの・・・という部分を知らないのは、暴力の仕組みに組み込まれていくのだろうと感じた。と、自分の反省を書き出すとキリがないのだけど、私はやっぱり思想に縛られずに、自分の頭で考えることを目標にしたい。
森達也監督がよく言う「事実は一つでも真実はたくさんある」みたいな言葉を、私が最初に知ったのは、ゴダールの「中国女」だった気がする。私は結局その言葉を、分かった気でいながら、たぶん今やっと理解に一歩近づいたというレベルなんだと思う。
とか思ってたら、今回のパンフに森達也監督が対談してる記事がある。青山真治も書いてるし、脚本も載ってるし、パンフ買っちゃった。読むところたくさんだからまだ読んでないけど。
ていうか、この映画はまだまだ感想書ける。それくらい素晴らしい。もう一回観る気がするから、また書きます。