異国の丘/劇団四季

劇団四季を観るのは中学生の時に「クレイジーフォーユー」を観た以来。どんどん凄くなってるっぽい。
近衛文麿の息子(近衛文隆)は実際にシベリア抑留で亡くなったらしくて、この劇は、その近衛文隆がシベリア抑留中に、ソ連からスパイの勧誘(って変な言い方だけど、日本に帰ってソ連に有利になる政治をする約束を強いられる)を受けながらも、頑なに断り続ける話を、過去の回想シーンを挟みながら展開していきました。
回想の部分は、日中戦争が起こる前に、近衛文隆と蒋介石の姪が出会って恋に落ち、日中の和平に力を尽くす物語。シベリア抑留中に回想してるということで、現実はもちろん、物語の中でも和平は失敗に終わってしまうのだけど。
この「異国の丘」を鑑賞するにあたって、私は一応事前にちょっと予習をしたんだけど、細かい部分はあんまり関係なかった。普通に知ってれば十分に分かるように、台詞で丁寧に説明してくれてた。戦争には、いろんな面があるけど、シベリア抑留に関しては、ロシアはやりきれないほど残酷なやり方を日本にしたと思う。シベリア抑留兵士たちが「異国の丘」を歌い出すシーンは、涙腺決壊寸前。
ただそれはそれとして、近衛文隆を始めとして、被害者であり加害者でもある人は多くいる思う。日本のために戦った兵士たちに私たちが考えなきゃいけないのは、「ありがとう」の感情でもあり「ごめんなさい」の感情でもあると思う。日本のために戦った彼らは、当時選択の余地もなかった訳で、それを誇りに思うと言うのも勝手な気がする。けど、日本は戦争があって、今のような先進国になったのも事実だと思うし、そのために犠牲になった方々にはいくらお礼を言っても足りない。そのどちらかではなく、両方の感情を同時に考えるバランス感覚を私は忘れなくないと思えた作品でした。